上杉 鮎香(北海道大学農学部)
要旨:熊本のカルデラをイメージし立体的に土を盛り上げ、カルデラ内に札幌の雪景色を草花で表現する花壇です。札幌は積雪量の多い地域でありつつも人口が多いため、冬には雪景色の中に、建物やイルミネーションなどの人工的な灯りが色とりどりに反射します。このような「札幌らしい」景色を、白を基調とした草花の中に鮮やかな色の花を散りばめることで反射する光を表現したり、草丈のある花を用いて札幌中心部のビル群を表すことで表現したいと考えました。また、熊本の阿蘇カルデラに見立てて立体的に盛り上げた花壇にすることで、2道県の友好を表しています。
注意! 発表資料を無断でコピー、転載しないでください。スクリーンショットもご遠慮ください。
カルデラ内部を花壇にする点に作者の独創を感じる。が、外から見るカルデラ壁の造景的な意義が分かりにくい。単に阿蘇だけでは言葉による解説に終わり、感動がないし、カルデラ内花壇だけに造景的意義が集中するなら、サンクンガーデンの方が、より感動できるのでは?
ご意見いただきありがとうございます。
今回のくまもとフェアへの出展花壇では、花壇の場所や形、大きさが決められているため、サンクンガーデンのような建築的な立体を利用することはできませんでした。
しかし、感動が無いというご意見はもっともだと思いますので、ただ単にカルデラの形を利用するだけではなく、立体的な工夫やデザインを考えるべきだったと思っております。
熊本のカルデラと札幌の雪景色をイメージしているということなのですが、形態をそのまま混合させるのではなく、何か物語をつくればもう少し引き込まれるかなと思いました。例えば、カルデラ内部は、爆発によって周辺とは時間軸がずれ、植生も変わってきますよね。そのような時間軸のズレを包み込むような雪と花々・・・といったような(これは今思いつきの妄想ですが)。
また、電飾を散りばめたということですが、せっかく凹凸のある地形をつくっているので、電光の元が見えないように、陰影等をうまく利用し、花々をやさしく照らしたほうが感動的になるのではないかと思いました。
ご意見いただきありがとうございます。
仰る通り、形態だけの利用、特にカルデラに関しては形しか考えられておらず、阿蘇の歴史や提案いただいた爆発による時間軸のズレなど、何か特徴を取り入れるべきだと思いました。
電飾についても、ポスターにある電飾イメージだと電飾ばかりが目立つ印象になってしまっているのに気づきました。あくまでも草花がメインになるように、電飾の付け方を考えるべきだったと感じております。
回答ありがとうございます。物語についてはふと思いついた程度なのですが、おそらく最初の設定のハードルが高かったので、それを乗り越えるためには諸々工夫が必要になってきますね。花の種類や植え方などをよく検討されていることは伝わりますので、是非表現の幅を広げてください。
出展側の札幌だけでなく、フェア開催地である熊本の要素もコンセプトに取り込もうとした点、おもしろく感じました。一方、野村先生のコメントとも関連しますが、自然条件が異なる札幌と熊本の特徴を違和感なく共存させるデザイン上のひと工夫がほしいな、と感じました。
【質問】
プランの対象となる敷地の外側とのつながり、境界部分の高さの関係はどのようなしつらえになるでしょうか?
—–
他の方のプランから、対象となる敷地は、周り3面にじゃかごやベンチが配置され、残り1面には階段が設けられるように見え、じゃかごの高さ40cm分地盤が低いように思います。境界部が同じ高さにならないと、カルデラの外壁部の立ち上がりが不自然に感じられるように思う一方、高さを合わせた場合じゃかごやベンチはどうする?という問題が生じますが…
敷地外側との高さ関係、さらに隣の花壇敷地との距離なども含めて検討すると、花壇の演出がより印象的になるかもしれません。
ご質問ありがとうございます。
敷地の周り3面はベンチを設置し、残り一面はウッドデッキが設けられ、おっしゃる通りベンチの方が40㎝高くなっています。
花壇はウッドデッキに高さを合わせ、ベンチとは差がある状態でイメージしておりましたが、ご指摘いただいたようにカルデラの立ち上がりが不自然になることを考えると、一工夫必要だったと感じております。
熊本と札幌という南北の都市を融合させる花壇のデザインは、頭を悩ませる事が多かったのではないでしょうか。
造景的に熊本の阿蘇山カルデラに札幌の雪とイルミネーションを組み合わせて見事に解決していると思います。
残念に感じたのは、カルデラのマウンド形状はもう少し凹凸を付け、大地が作り出した壮大な造景を表現できれば良かったことと、花壇の中の電飾は実際の電球ではなく、植物で表現して欲しかった(花壇の鑑賞は日中が中心であるため)ところです。例えば、オキザリス・トライアングラリスやムラサキゴテンなどのダーク系のカラーリーフを夜景に見立て、その中に点々とアグロステンマなどをイルミネーションとして配植するようなイメージはどうでしょう。
ガーデンデザインは無限の可能性が広がる世界で楽しいですね。機会があれば実際にガーデン造作にもチャレンジしてみてください。
ご意見いただきありがとうございます。
私の中のイメージではカルデラの外周はもう少し高さを出したいのですが、スケッチでそのイメージを表せられていないと反省しております。
ダーク系のカラーリーフの中に色のある花でイルミネーションに見立てるという方法については自分でも一度考えたのですが、札幌の雪景色の表現との両立が難しいと思いました。そのため、昼の明るい時間は白い花壇を楽しんでいただき、夜に冬のイルミネーションの雰囲気を感じてもらおうと電飾の配置を提案いたしました。しかし、電飾を置くだけというのも安直だと思うので、ひと工夫必要だったと感じております。
開催地へのリスペクトを込めたコンセプトづくり、また草丈での立体感の演出などに感心しました。数多くの品種を使っているようですので、熊本の気候、花期も考慮されたものなのか気になりました。
ご質問ありがとうございます。
くまもとフェアでは、基本的には主催者側から指定された花卉の中から選択し購入します。今回デザインに使用した花卉は、そのリストから選んでいるので熊本の気候や開花期は合っているはずです。
一つ一つ調べた訳ではないので、この機会にそれぞれの花卉について調べてみようと思います。
札幌と熊本の組み合わせは奇抜で斬新なアイディアですね。とても面白いです。
阿蘇の草原は氷河期の生き残りの植物がたくさんあります。その一部は北海道と似たものが少なくありません。植栽種を選ぶ際に、その辺あたりを考慮すると本質的なところで繋がりが生まれてくると思います。
ご意見いただきありがとうございます。
そのような共通点があることを知らなかったので、勉強になりました。
また花壇デザインを考える機会があれば、使用する花卉の種類にも意味を持たせられるように考えてみたいと思います。