尾田 美月(札幌市立大学デザイン学部)
要旨:私たちの⽇常はなんとなく過ぎて⾏く。⼩説や映画の主⼈公みたいに、突然の悲劇に襲われたりなんてことはそうそうない。でも、ちょっぴり寂しくなったりちょっぴり悲しくなったり、⾃分でもうまく⾔葉にできないようなモヤモヤとした気持ちは毎⽇⽣まれる。思っていたのと何かが違う。⾃分とみんなとの間にある違いは何なんだろう。そんな⼩さな違和感を、他の楽しいことや嬉しいことで紛らわしながら私たちは⽣きている。でも、そんな違いがあったって良い。正解とは違ったって良い。そう思えたら⾃分なりの⼈⽣をもっと楽しく⽣きられるはず。芸術の森野外美術館の隣にありながらそれとは「何かが違う」この森を歩いて、⾃分にもっと向き合ってみようよ。
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芸術の森野外美術館にある作品との対比の観点は大変おもしろく拝見しました。それぞれの作品に関するオマージュの発想はさすが!と思いつつ、このいわかんのもりという空間全体での体験として「いわかん」はどのようにデザインされていますか?例えば、歩道をあるいていく長さや、作品への出会い方、配置などにおいて、意識されたことはあるでしょうか。
コメントありがとうございます。
この遊歩道を考えるにあたり実際に芸術の森野外美術館を訪れたのですが、作品が置いてある場所や辿り着くまでの道のり、作品に与えられた空間の大きさなどが各作品の特徴に合わせて作られていることを感じました。見ている私たちが自然と作品に意識を集中させることができるのは、そのような空間の使い方の工夫があってこそだと気づいたため、「いわかんのもり」では逆に不自然な空間の使い方を心がけました。例えば、本来作品が置かれるであろう広いスペースにあえて何も置かずにたくさんの枝分かれの道をつなげてみたり、奥まった森の中が似合う作品を青空の下にポツンと出してみたり、という部分です。「椅子になって休もう」は作品自身が堂々と主役になれるインパクトのあるものですが、そのオマージュ作品の「机になって働こう」は周りに針葉樹を不自然に直線上に配置しているため、まずは木のインパクトが目に飛び込んできて、続いて作品のインパクトがやってくるという二重の驚きや面白さを感じてもらえるのではないかと思います。作品全体の配置としては、芸術の森野外美術館と左右対称になっています。どちらも順路は決められていないですが、同じように回ろうとすると作品が現れる順番が逆になると想定しこのような配置になりました。
ご回答ありがとうございます。作品そのものもそうですが、それがどのように佇むのかということも大変重要な視点で、野外美術館ならではだと思いますので、よく考えられていることが伝わりました。ポスター1枚で表現するのはとても難しいと思いますが、ご説明頂いたことがプレゼンボードから伝わるとさらにいいですね。
空間を改変したり新たに創造したりするのではなく、実際の作品を”いわかんのもり”として認識させるための視点設定の着眼点が素晴らしい!
尾田さんが、この着眼点に至った経緯はどのようなことがきっかけだったのですか?
芸術作品の新たな楽しみ方を知ることができました。
コメントありがとうございます。
今回の課題が「札幌市立大学芸術の森キャンパスと札幌芸術の森美術館を一体的な地域の芸術拠点とみなし、周囲の森にアートと自然が調和する散策路を設計する」というものだったため、まずは美術館が隣接するこの場所ならではの提案を考えたのが始まりでした。また、大学に入ってから人とは違う独創的なアイデアを求められる機会が増えたと感じており、自分の中でしっくりこないときの難しさや「みんなと一緒」から離れる怖さを知ると同時に、様々なアイデアから受ける刺激や自分の個性を出してみる楽しさをを少しずつ感じられるようになってきたと思っていました。そのことを遊歩道にも表現したいと思い、課題の条件とも合わせて考えた結果このような形になりました。
回答ありがとうございます。
課題が新たな視点を生み出す契機となったのですね。
これからも感性に磨きをかけていってください。
尾田様
北海道大学農学部3年花卉緑地計画学研究室3年の北沢一樹と申します。
素晴らしい作品を見せていただき、ありがとうございます。
感想を述べさせていただきたいと思います。
まず、タイトルですが、「いわかんのもり」というタイトルから、
「どんな作品なんだろう」という興味関心が湧きました。
同様の気持ちを持った方は数多くいらっしゃると思います。
作品だけではなく、それを如何に人に見せるかという点で、
タイトルも大切なのだなということを実感させていただきました。
また作品全体も、他の人が気づかなそうな点、見逃していそうな点に
着眼されたということも独創的で素晴らしいと思いました。
私も発想や独創性を意識しながらデザインなどを考えていきたいと思いました。
コメントありがとうございます。
タイトルを平仮名にすることで見た人に引っ掛かりを持ってもらえたらという気持ちもあったので、そう思っていただけたなら嬉しいです。
他の方々の作品や審査員の方々からのコメントを通してまだ改良できるところがあると感じたので、私もこれからも頑張りたいと思います。