2023年度北海道支部大会「口頭発表・ポスター発表審査結果・講評」

2023年度北海道支部大会「口頭発表・ポスター発表審査結果・講評」

 

審査概要

・学生の口頭発表は5件,ポスター発表は28件の応募がありました。

・「新規性」「論理性」「表現力」「質疑応答」の4点について審査員7名(口頭発表3名,ポスター発表4名)による審査を行いました。

全体的な講評(口頭発表)

対面での発表が再開された昨年と比べて発表件数はわずかに少なくなりましたが,今年も幅広い研究内容が集まり,それぞれしっかりとした専門性に基づく興味深い発表であったと感じました。また,いずれのテーマも,地域の課題や社会のニーズに寄り添った,すぐれた着想の研究であったことが印象的でした。

審議の結果,今年度は上位三名が僅差で並びましたが,総合的に優れていると判断された発表1件に口頭発表優秀賞を,着眼点やテーマ等が優れていた2件に口頭発表奨励賞を授与します。

・口頭発表優秀賞(1件)

大越 陽(北海道大学大学院農学院),松島肇,植野 晴子

「宮城県気仙沼市三島海岸における防潮堤法面緑化上に出現した徘徊性昆虫群集」

仙沼市三島海岸の覆砂・緑化施工された防潮堤法面において,グリーンインフラとしての生物多様性への寄与を評価するために,徘徊性昆虫の生息状況の把握を行った研究です。発表では,出現種の詳細が提示されておらず,生息環境に関する踏み込んだ解析が無いといった問題点もありましたが,一般に見落とされがちな生物群に焦点を当て丁寧な調査・取り纏めが行われた点が高く評価されました。今後のさらなる研究の発展が期待されます。

・口頭発表奨励賞(2件)

内田 英利香(北海道大学大学院農学院),愛甲 哲也

「札幌市内の水遊び場利用者の実態とニーズに関する研究」

物的・社会的環境や管理水準などの構成要素が異なる水遊び場を対象に,訪問者の選択志向や期待する要素の違いを明らかにした研究です。アンケートの調査デザインからある程度予想された結果ではあったものの,得られたデータに対して仮説検証を通じてシンプルに分かり易く纏められていた点などが総合的に評価されました。今後,データが蓄積されることでさらなる研究の深化が期待されます。

 

相川 萌音(北海道大学大学院農学院),愛甲 哲也

「札幌市の公開空地の植栽形態及び緑視率と歩行経路・滞留との関係」

札幌市における民有地緑化と利用実態の関係を把握するために,植栽形態・緑視率が異なる公開空地において歩行者の経路と滞留程度の違いについて調べた研究です。行動観察だけではなく緑化要素について定量的な評価を試み,両者の関係を取り纏めた点が独創的で新規性に富んだ研究であると評価されました。今後,こうしたアプローチがさらに洗練されることで研究の多面的な発展が期待されます。

 

全体的な講評(ポスター発表)

28件のポスターの中で,共通して4名の審査員の目に留まったものは,泥臭く,労力を惜しまず現地に足を運び,現場感覚をもって取り組んでいると感じられたもの,ポスターの表現や質疑などのコミュニケーションを通して自分らしさが表れていると感じられたものとなりました。

その中でも,仮説に基づく研究の一定の成果が表れ始め,その上で今後の課題を明確化できていると判断された1件にポスター発表優秀賞を,今後の研究の発展性への期待や多様な視点から物事を捉えポスターの表現として完結性が高いと感じられた2件にポスター発表奨励賞を授与します。

・ポスター発表優秀賞(1件)

大庭 夕佳(北海道教育大学教育学部(函館校)),五十嵐 稜馬,村上 健太郎

「iPad Pro搭載のLiDARは森林調査を効率化し得るか」

iPad Pro搭載LiDAR及びスマホアプリによる樹木の胸高直径の計測の効率化について調査した研究です。研究対象とする技術の有効性について仮説をたて,現場での検証を経て一定の成果が現れ始めていること,その上で今後の課題を明確化している点が評価されました。効率よく精度の高い森林調査の実施を可能とする技術開発は,現場技術者だけでなく社会的な要請として高まりつつあることから,今後の研究の深化が期待されます。

・ポスター発表奨励賞(2件)

小林 雅果(札幌市立大学デザイン学部)

「馴染む 〜境界のグラデーション〜」

地域や土地のポテンシャルを活かしながら新たな魅力を引き出す大倉山シャンツェの複合計画について検討されたものです。自然条件,利用上の課題はもちろん,競技者の視点もふまえるなど,デザインにあたって多様な視点からアプローチし,その論理の組み立てが形として表現されていました。ポスター表現の完結性の高さとともに,質疑応答についても的確に回答されていたことが評価されました。

 

上畑 拓欣(札幌市立大学デザイン学部)

「太陽光発電設備の設置拡大に伴う景観的課題点の明確化」

自然景観あるいは都市景観における太陽光発電設備の設置の課題を明らかにしようとする研究です。自身の問題意識に基づき,具体的なデザイン提案まで見据えて,現地に足を運び,現場感覚をもって取り組んでいることが評価されました。問題意識と社会課題がマッチした実用性の高さが感じられ,今後の研究の進展が期待されます。

 

2023年11月8日 | カテゴリー : 支部大会 | 投稿者 : jilah