■審査概要
- 学生の口頭発表は8件,ポスター発表は20件の応募がありました。
- 「新規性」「論理性」「表現力」「質疑応答」の4点について審査員7名(口頭発表3名,ポスター発表4名)による審査を行いました。
■全体的な講評
・口頭発表:
オンラインで行われた一昨年及び昨年より発表件数が多くなり,活発な研究発表・議論が行われたのが印象的でした。コロナ禍の難しい時期であったにもかかわらず,新規性・独創性・論理性に富んだ熱心な研究が多く,造園学の発展に寄与できるセッションであったと思います。
審議の結果,今年度は総合的に優れていると判断された発表1件に口頭発表優秀賞を,着眼点や独創性等がそれぞれ優れていた2件に口頭発表奨励賞を授与します。
・ポスター発表:
大学での演習課題や卒業研究の中間報告が大半を占めましたが,優れた着眼点をもって新規性の高い研究テーマに取り組んでいるもの,独創的な発想のもと主体的に取り組んでいるものがみられ,今後の展開に期待が持てる発表が多い印象でした。
以上を踏まえ,特にテーマの新規性,主体的な取組み姿勢や質疑応答が高評価で,総合的に優れていると判断した2名にポスター発表優秀賞,研究テーマの今後の発展に期待が寄せられた2名にポスター発表奨励賞を授与します。
- 口頭発表優秀賞(1名)
陳 絵(北海道大学大学院農学院)、愛甲 哲也
「ヤシ侵食防止マットの施工によるチングルマの種子定着効果」
高山植物チングルマの保全のために,国立公園内で用いられている侵食防止マットの効果を検証することを目的とした研究です。研究目的や論旨が明瞭であり,既往研究の整理や実験・野外調査手法の説明,結果・考察も含めて聴講者への適切な情報提示が行われており,質疑応答も含めて最も優れていたと評価されました。今後,更なる研究の深化が期待されます。
- 口頭発表奨励賞(2名)
卓 一豪(北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院)、上田 裕文
「中国広西チワン族自治区における「農家楽」観光の均一化問題に関する考察 ―風景イメージスケッチ手法を用いて―」
風景イメージスケッチ手法を活用してアンケート調査を行い,中国における農村観光の一形態である「農家楽」リゾートの均質化問題について分析を試みた研究です。発表では,結果や考察の提示が充分になされていないようにも見えましたが,発表者らが過去数年にわたって意欲的にこの研究に取り組んできたこと,熱心なフィールドワークによる研究であること等が総合的に評価されました。今後の更なる研究の発展が期待されます。
北沢 一樹(北海道大学農学部)、愛甲 哲也
「富士山におけるCOVID-19前後での登山者の変動に関する研究」
富士山の登山ルートを研究材料に,コロナ禍での国立公園訪問者の行動変化のあり方について明らかにしようとした研究です。得られた結果をどのように公園管理や情報発信に結びつけるのかなど,課題があると考えられますが,新規性・独創性に優れた研究であること,はきはきとした発表・質疑応答ができていたこと等が評価されました。今後の研究の発展が期待されます。
- ポスター発表優秀賞(2名)
髙橋 麗未(札幌市立大学デザイン学部)
「水景空間における水影の研究」
水景空間における新たな演出手法として,水面の照り返しである「水影」に着目した新規性のある研究であり,卒業研究の中間報告ということもありますが,研究の着地点を見据えて取り組んでいる点が高く評価されました。また質疑応答の際の適切な受け答えや,研究に対する主体的な取り組み姿勢なども評価されました。
王 ロ(北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院)、上田 裕文
「SNS写真から洞爺湖における観光客がGeodiversityに関する認識を考察する ー支笏湖との比較を通してー」
洞爺湖の水辺景観に対する観光客の認識について,SNSの投稿内容を分析する研究手法に独自性が垣間見えるとして評価されました。また質疑応答の場面で質問者に対して真摯に回答する姿勢が認められ,研究テーマの着眼点と合わせて総合的に優れていると高く評価されました。
- ポスター発表奨励賞(2名)
佐藤 美月(室蘭工業大学理工学部)
「サイバー空間での遊びの特性に考慮した現実空間の外遊び環境の整備に関する研究」
サイバー空間での遊びというきわめて現代的な研究であり,サイバー空間での遊びの特性と,現実空間での外遊び環境との関連性についてしっかりとした問題意識を持って研究に取り組んでいる点,今後の発展に期待が持てる新規性のある研究テーマであることが評価されました。
姫野 南美(北海道教育大学函館校教育学部国際地域学科)、四ツ屋 和、村上 健太郎
「北海道南部における海浜植生の種組成とその成帯構造」
道南地域における海浜植物の成帯構造を把握し,都市化の影響を明らかにしようとした研究で,現地でのフィールドワークを通して着実に研究を進めていること,研究テーマとしての継続性が評価され,また研究内容の社会への波及についても自身の考察をしっかりと持っている点が評価されました。
以上