鄧 ケイ林(北海道大学国際広報メディア・観光学院)
要旨:本研究は観光客の眼差しに注目し、農園の景観に対する人々の観賞ニーズと現実の格差を解明しようと試みる。風景イメージスケッチ手法を用いて被験者が描く観光農園の画像を基に、農業景観の認識の抽出・把握を行い、人に求められる農園の景観特徴の解明を目的とする。画像データの収集には、IT技術会社NVIDIAが開発したスケッチ–風景画像変換ソフト「GauGAN」を使って、被験者のイメージに近い画像を得て、自然・農業景観対する心象抽出能力を、先行研究より向上させることができると予想される。
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観光農園においても景観に対する観賞ニーズと現地の格差を明らかにすることは観光農園の発展にとっても重要な視点だと思いました。
一方、本研究では、日帰り観光客にアンケート調査を行うこととしていますが、この対象者の中には景観に対するニーズをそもそも持っていない(景観への関心がない)者も一定数含まれると思いますが、そのような者の調査結果はどうのように扱うべきとお考えでしょうか?
ご質問頂きます誠にありがとうございます。おっしゃった通り、日帰り観光客の中には、果実の品質や入園価格、交通の利便性など方面に注目して、景観に関心を持っていない方がいらしゃると考えます。一方、景観への関心がまた喚起されていない人でも、個人的な空間への感知や、景観見え方があると考えられます。そのため、画像の中でこのようなデータを抽出して、分析する価値があると思います。
風景イメージスケッチ手法にGauGANというAI描画アプリを用いることで、被験者の描画スキルに左右されにくい結果が得られることが出来るモデルだと感じました。アプリで不足する情報はアンケートと補足する手法でより被験者が求める観光農園の風景イメージの具体化が期待されます。
調査手法の検証も含めた研究かと思いますが、AI描画アプリを使った先行研究事例などがあれば教えてください。
コメント頂きますありがとうございます。AI技術はランドスケープデザインのモデル作り段階に応用されていますが、風景評価実験に応用する文章はまた見られないようです。一方、バーチャル画像を用いて評価実験は多いです。CG画像を使って都市河川空間整備に関する研究(安倍、1996)、VR空間における心理的影響の評価に関する検討(横井、2013)、農村地域の修景におけるCGイメージアンケートを用いて合意形成手法(大西、2007)などの研究事例がみられます。描画アプリではないですが、参考になるとかんがえます。
北海道大学の桑村と申します。観光農園について体験型の観光が主だと感じますが、風景評価を基にした景観という視点からアプローチする点が面白いと感じました。人々が持つイメージや求める農園について、出身や居住地域など個人差が影響し、大きなばらつきが出るのではないかと思いますが、その場合の分析はどのようにされるのでしょうか?そのようなばらつきも、アプリの処理で解決されるのか気になりました。
コメント頂きますありがとうございます。おっしゃった通り、風景イメージは個人の元々の生活環境と繋がって、違う風土システムに影響を受けた人は、違うイメージを持っていると予想します。一方、この度の実験対象地は札幌周辺エリアの農園を設定し、日帰り観光客を中心に調査を行いたいです。調査データより、9割ぐらいの利用者は道内客です。出身により大きく個人差が出でくる場合、出身の地域環境の特徴とイメージの特徴の関係性の分析を行いたいです。アプリが処理できない場合、アンケートとヒアリング調査でデータを補足するつもりです。よろしくおねがいします。