出口 嵩人(室蘭工業大学工学部)
要旨:近年,歴史的であるが法令により保全されない建造物の開発行為等による消失が見受けられ,住民がその状況を懸念する場合がある。他にも樹木の伐採等,地域資源の開発行為に対し住民の反対が起きる例もある。このような地域資源は,住民にとって潜在的な地域資源と位置づけられるが,住民により評価が異なるため保全が困難である。しかし,潜在的な地域資源には,住民の地域愛着の向上等の役割やその役割に応じた価値があると考えられ,その保全は,その役割や価値の維持に寄与すると考えられる。そこで本研究では,住民にとっての潜在的な地域資源を発見,視覚化し,また,その役割や価値の評価に基づき保全方策を検討することを目的とする。
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ポスター作成と発表ありがとうございます。質問お願いします。
建造物が例にあげられていますが、ここでいう「地域資源」の定義を教えて下さい。
ご質問ありがとうございます。
「地域資源」の定義としましては、本研究では少人数でも利用を行っているもの、価値を感じているんもの、また今後利活用を行っていけるものを「地域資源」と定義しております。そのため建造物は地域資源に含まれることになります。しかし、自宅や庭等どこまで私的な部分のものを地域資源とするかということは現在検討中の段階です。
北海道教育大函館校の村上と申します。「潜在的な地域資源をアンケートで発掘する」ということですが、地域資源をこれまでどのような手法で発掘していたのでしょうか。公務員など、地域をマネジメントする側からの目線で地域資源を抽出した場合との差異が浮き彫りになるようなら面白い研究になるのではと思いました。
ご質問ありがとうございます。
研究経過のため、調査はまだ行っていないのですが、「予想される結果」として挙げられている地域資源は、自分自身の体験や、友人に対しての質問、インターネットでの反対運動の情報等を参考にまとめさせていただきました。
潜在的な地域資源の役割や価値を明らかにしようとする試みは地域愛着など考える上で重要な視点だと思いました。
一方、地域資源となりうる対象が潜在的なままであるのは、それなりに理由もあるかと思いますが、特に保全方策の検討にあたってはその保全コストはどのようなとらえ方をされるのでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
保全する資源により捉え方は異なってくると考えています。私有物や老朽化で取り壊しになりそうな公有物等の場合には、クラウドファンディングや募金等地域住民などでコストを賄っていく必要があると考えてますが、老朽化による取り壊し以外での開発行為により公有物等が消失する場合、例えば、道路幅を広げるために街路樹を撤去するという話に反対が起こった場合などには、その保全のため市町村がコストを持つ必要があると考えます。
他のコメントにもあるが、潜在的地域資源の定義がわからないのでアンケートの質問文もどんな表現だったのかが気になるところ。
通常は、言葉として表現できないようなもの、つまり景観人類学でいう背景(background)的なものが潜在的な地域資源の場合が多いので、アンケートよりもある程度長期にわたる参与観察を用いたら、かなり面白い地域資源が発見できると思う。
ご意見、ご質問ありがとうございます。
このポスターは研究経過のため、アンケート内容については、今後考えていくことになります。ただ、現段階では「自分の所有物でないもののうち開発行為等が起こった場合に反対したい資源」を潜在的な地域資源と定義しております。今後ご意見も参考にし、より良い研究にしていきたいと思います。
街路樹という地域資源で似たようなデータを収集したことがあるので、大変興味深く拝見しました。自分の経験では、地域資源が何にせよ、被験者と対象物との地理的関係が動機へ大きく影響していました。例えば、落ち葉の影響を受ける街路樹に面した被験者は街路樹は不要、街路樹から離れている被験者は景観が良い、日影が涼しいなど街路樹は良いという傾向が強かったのです。
出口さんの研究では、被験者と対象物との地理的関係がクロス集計できるようなデータのとり方を行った(行う予定)でしょうか?
ご質問ありがとうございます。
現段階では、接触頻度として「目にする回数」や「利用頻度」等は調査する予定でしたが、被験者と対象物の地理的関係については、調査する予定はございませんでした。今後ご意見を参考に地理的関係もアンケート項目に取り入れていこうと思います。貴重なご意見ありがとうございます。
地域への愛着が保全の原動力になるという点でには賛同します。でも実社会の中では、愛着だけではまとめることはとても難しいです。愛着を客観的な価値の評価に結び付けられるような分析が望まれます。
ご意見ありがとうございます。
ご意見を参考に今後、愛着を愛着として評価するのではなく、客観的評価が行えるようアンケート項目を検討していこうと思います。